お酒で酔う訳

     

先日、ある友人とお酒を飲んで翌日。
「昨夜のことは全く覚えていない」と。
「え〜〜〜〜!!あんなにしっかり熱く語ってたのに!」
どういう風に帰ったか覚えていないといいます。

その原因は一体何なのでしょう?
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酔っ払いの行動は
杯を重ねるにつれ、あきれるほど同じ話を繰り返します。
こうした特有の行動の裏側に、
調べてみると脳とアルコールの不思議な関係がありました。

アルコールによる影響が出やすいのは
・前頭葉
・小脳
・海馬   の3つ。
前頭葉は人間の思考や理性の制御、
小脳は運動機能の調節、
海馬は記憶の保存を司っています。

しらふでは到底考えもつかない、酔っ払いならではの奇行は、
これらの部位の機能低下によって引き起こされます

正常時、脳は「理性のガードマン」とも言える前頭葉によって、
理性的な行動が保たれています。
しかし一旦アルコールが入ると、
前頭葉は徐々にガードマン的な役割から解き放たれ、
結果的にコントロール機能が低下します。

ほろ酔いになってくると、
例えば、悪口や秘密、自慢話を言いたがる人がいるでしょう?
普段なら絶対に言わないことをしゃべり始めるのは、
前頭葉が麻痺し始めた典型的な状態なのです。

・やたら大きな声でしゃべる
・下ネタを話す
・遠い距離でも歩いて帰ろうとする

なども前頭葉が麻痺することが原因です。
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酔いが深まるにつれて、
前頭葉の理性を抑制する力は徐々に弱まっていきます。
酒の席でよくありがちな「ここだけの話…」もまさにこれです。

しかし、悪口や自慢話を言っているうちはまだ軽度。
さらに酔いが進むと、ますます挙動にも影響を及ぼします。
こうしたことに関与しているのが小脳です。

小脳は平衡感覚、精緻な運動や行動、知覚情報などを司る部位。
アルコールによって小脳の機能が低下してくると、
運動のスムーズさや正確さが保てなくなります。
そのため、 千鳥足になる、呂律(ろれつ)がまわらなくなります。

多くの人が経験している「記憶の忘却」。

翌朝、「二次会の店でお金を支払っただろうか?」と振り返って不安になります。
一緒に飲んでいた人に聞いてみると、
「きちんと会話していたし、お金も払っていたよ」と言われ、
胸をなで下ろすものの、当の本人は全くといっていいほど記憶がない。

海馬は短期記憶を残し、
それを長期記憶に変えるという2つの役割があります。
短期記憶とは、新たなことを一時的に記憶するだけで、
覚えていられる時間はごくわずかです。

酔っ払いが何度も同じ話をしたり、
きちんと精算を済ませたかを覚えていないのは、
『1度話をした』という記憶をセーブしていないからです。

どんな会話をしたか覚えていなくとも、
カーナビで自宅を目的地設定したかのように家に帰りつけるのは
「長期記憶のおかげ」です。
帰宅するまでの道のりは、
毎日同じ道を繰り返し通ることで、長期記憶として固定化されます。
日々記憶の格納庫から記憶を取り出しているので、
酔っていても容易に記憶を取り出すことができます。
ほとんど意識がない状態でも家に帰ることができるのはそのためです。

この友人は先日「お父さん」になりました。
もう「記憶を無くす」ことはないと思います(笑)