日本の森林
- 2015.05.09
- 木
昭和20年~30年代には、日本では戦後の復興等のため、
木材需要が急増しました。
しかし、戦争中の乱伐による森林の荒廃や自然災害等の理由で
供給が十分に追いつかず、木材が不足し、高騰を続けていました。
このため、政府は造林を急速に行なうため
「拡大造林政策」を行いました。「拡大造林」とは
「おもに広葉樹からなる天然林を伐採した跡地や原野などを
針葉樹中心の人工林(育成林)に置き換えること」です。
伐採跡地への造林をはじめ、里山の雑木林、
さらには、奥山の天然林などを伐採し、
代わりに
スギやヒノキ、カラマツ、アカマツなど成長が比較的早く、
経済的に価値の高い針葉樹の人工林に置き換えました。
政府は
「木材は今後も必要な資源で、日本の経済成長にも貢献する」
と判断しました。
そして、
木材の生産力を飛躍的に伸ばし木材を大量確保するため、
拡大造林政策は強力に推し進められました。
この拡大造林の時期は「燃料革命」と重なります
。当時の家庭燃料は木炭や薪が中心でしたが、
この時期には
電気・ガス・石油に大きく切り替わっていきました。
もともと農家周辺の里山の雑木林は、
家庭燃料や農業に必要な肥料・飼料などの採取場所として
生活に欠かせないものでした。
また、都市に薪や炭を供給する役割も持っていました。
木炭や薪などのエネルギー源として利用されていた木材は、
この燃料革命とともに、もはやエネルギー源としては
時代に適さないと考えられるようになりました。
里山の雑木林等の天然林の価値が薄れたため広葉樹は伐採され、
建築用材等になる
経済的価値の高いスギやヒノキの針葉樹に置き換える
拡大造林は急速に進みました。
このスギやヒノキの木材価格は需要増加に伴い急騰しており、
木を植えることは
銀行に貯金することより価値のあることのように言われ、
いわゆる造林ブームが起こりました。
この造林ブームは国有林・私有林ともに全国的に広がり、
わずか15~20年の間に
現在の人工林の総面積約1000万haのうちの
約400万haが造林されました。
燃料革命と同時期の昭和30年代、木材の需要を賄うべく、
木材輸入の自由化が段階的にスタートし、
昭和39年に木材輸入は全面自由化となりました。
国産材の価格が高騰する一方で外材の輸入が本格的に始まったのです。
外材は国産材と比べて安く、
かつ大量のロットで安定的に供給供給できるというメリットがあるため、
需要が高まり、輸入量が年々増大していきました。
しかも、昭和50年代には、
変動相場制になり、1ドル=360円の時代は終わました。
その後、円高が進み、海外の製品がますます入手しやすくなりました。
これらの影響で、昭和55年頃をピークに国産材の価格は落ち続け、
日本の林業経営は苦しくなっていきました。
昭和30年には木材の自給率が9割以上であったものが、
今では2割まで落ち込んでいます。
日本は国土面積の67%を森林が占める世界有数の森林大国です。
しかしながら供給されている木材の8割は外国からの輸入に
頼っているといういびつな現状になっています。
一方、国内の拡大造林政策は見直されることなく続けられていました。
平成8年にようやく終止符が打たれましたが、
木材輸入の自由化、そして外材需要の増大の影響で、
膨大な人工林と借金が残りました。
現在、間伐を中心とした保育作業や
伐採・搬出等に掛かる費用も回収できず、
林業はすっかり衰退してしまいました。
間伐をはじめとする森林の整備(手入れ)を行ったり、
主伐を行っても採算がとれず、赤字になってしまうのです。
林業経営者の意欲は低下し、
若者は都市部へ雇用を求めるようになりました。
また、林業以外に目立った産業のない山村地域では、
林業の衰退とともに、地域の活力も低下し、
林業離れによる後継者不足、林業就業者の高齢化、
山村問題、限界集落と呼ばれる問題まで起こっています。
現在、日本の森林は充分な手入れがなされず、
荒廃が目立つようになりました。
荒廃した森林は、公益的な機能を発揮できず、
台風等の被害を受けたり、
大雨等によって、土砂災害を起こしやすくなります。
さらに、二酸化炭素を吸収する働きも低下し、
温暖化防止機能も低下します。
また、拡大造林政策によって生み出された
多くの人工林が収穫期を迎えていますが、
伐採さないまま、放置されている森林も目立ちます。
収穫期を迎えた森林を伐採し、植えて、育てる、
そして伐採するというサイクルを回す必要があります。
このサイクルを円滑に回すためには、
国産材を積極的に利用し、
需要を高め、資金を山に還元する必要があります。
森林を伐らないで守ったり、
植えて回復しなければならないのは
概ね海外(熱帯林の違法伐採等)の事情で、
日本とは異なります。
日本の森林資源は使われずに余っています。
日本では成長した森林を活かすべき時代となったのです。
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