大工の心を知った対談

     

井「お休みなんか無い時代ですね。給与ってどれくらいでした?」

荏「給与じゃないんですよ。おこずかい。月に3000円でした」

静「いいですねぇ。私は月1000円でした(笑)」

井「1000円で何が出来るんですか?」

静「何もできませんよ。全部貯金です。賄い付きですし、休みないし、朝早くから夜遅くまで、時間もないから使う時間がありません」

荏「現場から家に帰る自伝車でしたから帰ると遅くなるんです。住み込みで働きますからお金は必要ないですね。」

井「お金を貯めで大工道具を買うのが嬉しかったです。自分の道具を買うのが誇りでしたね。道具は大事にしましたよ」

荏「胴付鋸(どうつきのこ(※写真))を買って嬉しかったですね」

井「今の大工道具と昔の大工道具は違います?」

荏「全く違いますよ。鉋でも3種類必要で「粗・中・仕上げ」と必要です。もちろん砥石も「粗・中・仕上げ」とないと仕事になりません。」

静「今は鉋で削れない人も大工でいますよ。修業の時代長いからボードをパンパンパン!と。大工としては可哀想な気もしますよね」

荏「削りは【目で見たらいけない】んです。【手の感覚】なんです。触るのが一番正しい。最近の大工は教えてもらえないから確かに可哀想です。」

井「メンテナンスにお伺いするときは「鉋」は絶対必要でしょ?最近持っていかない人が多くないですか?」

荏「鉋、必要ない家が多いんです。メンテナンスはお客様とのコミュニケージョンですが、3年で家の狂いは止まります。それで長持ちする家ができるんです。メンテナンスにドライバーがあれば大丈夫な家は長持しない」

静「長持ちする家は土台とは柱は完全に自然乾燥させますが、梁はそこまで必要ない。建てた後に乾燥することによって家が締まってきます。3年くらいは梁が割れる音がするっていうでしょ?」

荏「どれだけ手間掛けるかで家の長持ちは決まります。昔は木を切り出すのにも時間が掛かっていました。ですからその間に結構乾燥していたんです。」

静「今の大工道具は電気が多いじゃないですか。手鉋の仕上げは水を弾きますが、電気鉋は水を吸います。見た目は同じでも木は全く違うんです。これを伝えていない大工さんもよくないかもしれませんね。昔のお施主はその違いをよく知っていましたから」

荏「今の家は短期間で完成してしまいます。本当はどんなに頑張っても建前してから半年くらいは掛かるものです。ある程度手間掛かるから長持ちする家ができるんですよ。それをユーザーに伝えていない私達にも問題は有ると感じています。」

詳しくは「伝統住宅のススメ7月号 http://www.kominkapro.org/monthly